街で芸能人やアイドルを見かけると、嬉しくてつい写真を撮りたくなりますよね。そして、芸能人に遭遇したことをみんなに自慢したくてTwitterに画像をアップ…。
でも、芸能人も一般人と同じようにプライバシーがあります。勝手に写真を拡散するこの行為、違法にはならないのでしょうか?
とくに最近は、他人の子どもの写真を自分のブログに勝手に掲載して問題になった…なんていう事件もあるくらい、今の世の中は個人情報に敏感です。
芸能人でも写真を勝手にSNSでアップした場合は罪に問われることがあるのか、アディーレ法律事務所の弁護士・吉岡一誠先生に伺いました。
無断で写真をツイートすると罪になる?
街中で大好きな芸能人を発見!写真を無断で撮影して、TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSでアップしたらどうなるのでしょうか?
実は、写真を撮影してSNSでアップすること自体は罪に問われません。これはちょっと驚きですね。
吉岡先生「ただし写真を撮るために、無断で他者の敷地内に入ってしまったらNG。住居侵入罪や建造物侵入罪といった犯罪が成立する可能性はあります」
SNSでの写真アップが罪に問われないとはいえ、吉岡先生によるとシチュエーションによっては損害賠償を請求される可能性はあるようです。いったい、どういうことなのでしょうか?
「プライバシー権」「肖像権」「パブリシティ権」とは?
今回のケースで関係してくるのは、「プライバシー権」「肖像権」「パブリシティ権」になります。それぞれ解説していきましょう。
「プライバシー権」
憲法第13条を根拠に新しい人権の一つとして認められている権利です。どこまでがプライバシーとして保護されるのかについては見解が分かれますが、個人情報保護法には、映像や音声による情報も含まれると明記されています。「肖像権」
自己の容貌をみだりに撮影されたり公表されたりしない人格的権利。「パブリシティ権」
有名人など名前や肖像自体に経済的な価値を有する場合に、自分の肖像を他人に使わせない権利です。
芸能人のプライバシーの範囲
「プライバシー権」「肖像権」「パブリシティ権」、これらの権利を侵害していないかどうかがポイントになりますが、公に出ることが商売である芸能人、どこまでがプライベートなのか線引きが難しいところですよね。
芸能人については、その地位や名声、芸能活動遂行のために、社会的注目を浴びるのは仕方のないこと。写真を撮影されて公表されることについても、一定程度は受忍せざるをえないと考えられるため、一般人に比べて権利侵害が認められにくい傾向にあります。
ですが、「プライバシー権」が一切認められないということではありません。以下の個別的な事情により、「肖像権」ないし「プライバシー権」の侵害の有無が判断されることになります。
- 撮影場所
- プライベート性の程度
- 公表による影響の程度
- 公表した人の属性(単なる通行人か、芸能人が訪れた店の店員かなど)
どのような場合に違法になる?
イベント時やドラマの撮影時については、人が見に来ることやツイート等の公表行為は想定の範囲内であり、「肖像権」ないし「プライバシー権」の侵害は認められない可能性が高いようです。
完全プライベートの場合でも、公衆の目に触れる公道上を芸能人が一人で歩いているところを、目撃情報としてツイートするという程度であれば受忍限度内となり、「肖像権」ないし「プライバシー権」侵害とまでは認められない可能性があります。
では、権利侵害とみなされるのはどういったケースなのでしょうか?
吉岡先生「例えば、飲食店の店員が、お忍びで来店した芸能人の写真を撮って来店情報をSNSでアップした場合、『肖像権』ないし『プライバシー権』侵害になる可能性は高くなります」
SNSに芸能人の写真をアップして、実際に訴えられた事例はあるのでしょうか?
吉岡先生「実際に訴訟にまで発展した事例は見当たりませんが、ホテルや飲食店の従業員が芸能人の来店情報をネットにアップして、勤務先から処分をされるという事例はあります」
基本的には、芸能人であってもむやみに自分のSNSで公表しない方がよさそうです。自分のバイト先に芸能人が来た!なんていう情報を流したことがバレたら大変なことになるかもしれませんよ。
写真アップは控えた方がいい
いずれにせよ、芸能人の写真をSNSでアップしても絶対に大丈夫という保証はありません。写真を無断で公表することは、通常は一般人であっても芸能人であっても気持ちの良いことではないので、控えたほうが良いでしょう。
芸能人を発見したときは、興奮して撮影写真をSNSにアップするのではなく、どのような影響があるのか少し落ち着いて考えてみた方がいいかもしれませんね。
取材協力
アディーレ法律事務所・吉岡一誠(よしおか いっせい)先生:
弁護士(東京弁護士会所属)。関西学院大学法学部卒業、甲南大学法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。友人がとても困っているのに、相談に乗ることしかできない自分自身に憤りを覚え、弁護士になることを決意。現在は悩んでいる方のために、慰謝料問題や借金問題などを解決すべく、日々奔走している。
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